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4月4日私は再び肝炎のため入院する羽目になつた。検査の結果薬物性肝炎ということであつたが,突然の入院は目常診療への影響もさることながら,5月の日耳鼻総会での"耳鼻咽喉科の現状と将来への展望"において勤務医の立場からの発言も予定されていたため,己れの不養生を反省させられた。幸いに多くの人々のご好意と経過良好であつたため総会にも出席でき,再び健康をとりもどしたが,ベットで考えていたことについて記してみたい。
私の病院の耳鼻科は二名の常勤医であるが午前中100名前後の外来と30名以上の入院患者をかかえ,週3日が手術日で他の2日は検査,小手術,看護学校講義,身体検査,社保審査などの雑用に当てられるため,一人では到底こなせない。したがつて,母校教室に応援をお願いすることになるが,総会前でありかつ遠方なため,新設された浜松医大と近くの病院の先輩に援助して頂いた。現在のような日本の医学制度では,出身校教室との連帯は生涯続く場合が多く,医師には何々教室出身という無形の背番号がついてまわる。同時代教室で過した者同志には強い心の絆がかよい合うのは,メスを持つ領域の科には徒弟制度的なところがあるためと思われる。このような面は時には閉鎖的になりがちであるが,私の住む静岡県西部地方のように耳鼻科の少ない地方(勤務医の常勤する病院はおずか3カ所)では,出身教室をのり越えてお互いの連帯を強めて行かねばならない。幸いにして新設された浜松医大耳鼻科教室は広く門戸を開いて積極的に交流を深めるよう努力して下さり,吾々もまた,学生に実地見学の場をわずかでも提供して協力は惜しまないようにしている。今回の入院に際しても野末教授以下4名という少人数にも拘らずご助力頂いたことに感謝の意を表しているが,総会終了後は母校教室よりもスタッフを派遣して頂き,十分静養できたことは望外の喜びであつた。
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