妊産婦の生理から・Ⅲ
褥婦における『カルシウム』代謝の研究
渡辺 金三郎
1
,
梅林 昌彦
1
1名古屋市立大学医学部産婦人科教室
pp.51-54
発行日 1961年5月1日
Published Date 1961/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202127
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まえがき
我々が健康を維持し,生体機能を円滑に営む上に必要不可欠の「カルシウム」は,「マグネシウム」,「ナトリウム」,「カリウム」等と同様に「アルカリ」性の鉱物質であり,生体を構成するばかりでなく,地殻をも構成する重要な物質でもあります.従つて適当な「カルシウム」の摂取は生体機能を順調にし,健康を保持しますが,この不足は全身体液の「アチドージス」を来し,細胞の生活力を低下させ,ひいては生体機能を低下せしめてしまいます.胎生期以後の生長期における「カルシウム」の重要性は今更述べる迄もなく,「カルシウム」の不足が生長を阻害し,適当な摂取が生長を促進することは実際的にも証明されており,又「カルシウム」の欠乏が骨系統の疾患や奇形などを惹起することも明らかであります.又生体構成に重要な哺乳期の主要な栄養源は母乳であり,母乳の含有する栄養素が完全であれば乳児は順調に生長する訳であり,この際にも「カルシウム」は大切な栄養素であります.従つて母乳含有の「カルシウム」の多寡は,乳児の生長と密接な関係にある重要な因子でありますが,従来は「カルシウム」測定法が複雑且つ困難であつた関係上,この方面の研究は少いのであります.飜つて「カルシウム」は生体中で主に蛋白質と結合した結合型「カルシウム」と「イオン」の状態になつた「イオン化カルシウム」として存在しております.
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