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アルツハイマー病とカルシウム代謝
羽生 春夫
1
1東京医科大学老年病学
pp.473-474
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902696
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■老年病とカルシウム代謝
カルシウムは体中のほぼあらゆる機能に関係し,細胞や生体が機能,生存していくうえでカルシウム恒常性は常に保たれなければならない.カルシウムは主に腸管からの吸収,腎からの排泄,骨における出入り(骨吸収と骨形成)の間の動的平衡関係からバランスが維持されている.この過程で副甲状腺ホルモン(PTH),カルシトニン(CT),ビタミンDなどのカルシウム代謝調節因子による調節機構が働き,細胞内・外液のカルシウム濃度は一定に保たれている.
一般に,老年者では慢性的なカルシウム欠乏状態にあり,血清カルシウム濃度を一定に維持するためにPTHの分泌亢進が起こる.PTHには骨吸収を促進する作用があり,軟部組織,特に動脈壁へのカルシウム沈着が増加して動脈硬化の原因となる.また細胞レベルでは細胞膜のカルシウム透過性が亢進し,細胞内のカルシウム増加につながり機能障害へと進む.このような病態は,老年者の多くの疾患,例えば骨粗鬆症や動脈硬化,高血圧,癌患者などで認められ1,2),さらに最近老年期痴呆,とりわけアルツハイマー病との関連も指摘されている(図).
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