意見 母性保健の問題点--母子衛生大会から
保健所から見た母性保健の問題点
浜口 剛一
1
1大阪府吹田保健所
pp.10-11
発行日 1960年2月1日
Published Date 1960/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201847
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母子衛生事情の発展・向上に,保健所の果たしてきた役割を軽視することはできない.特に乳児死亡改善につくしてきた努力は並々ならぬものがある.然しながら,保健所の母子衛生は,主として乳幼児保健に関するものであり,母性保健に関しては必ずしも満足すべき状態にあつたとはいえない(第1表).
母子衛生行政において,母性保健に対する施策の貧困という事は見逃せぬ重大問題であり,このことが,更に予算の制約・他の予防事業,たとえば結核予防事業に保健所機動力の大半が費されているといつたような制約と共に大きな障害として横たわつていたのである.たとえば,大阪府における昭和34年度予算をみると,結核予防費129,859,000円に対し,母子健康指導費は7,724,000円で,結核の1/18に過ぎず,また保健所を例にとつてみても,結核517,900円に比し,母子140,900円(吹田)と,結核の1/3に過ぎぬ状態である.また一方,保健婦活動の主要部分を占めている訪問事業についてみると(昭和33年度吹田保健所の例)結核家庭訪問件数2,786件に比し,母子訪問件数298件で約1/9に当る訪問しかなされていない.
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