映画紹介
白い牙(松竹作品)
外輪 哲也
pp.53
発行日 1960年8月1日
Published Date 1960/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201973
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井上靖の初期の作品が「愛の三部作」とし製作される.一月に封切られた有馬稲子主演の「わが愛(通夜の客)」で愛した女,この「白い牙」で愛にはぐくまれた女,次に製作される山本富士子主演の「猟銃」で愛された女を描こうとしている.演出五所平之助.
永年の不和から妻を離婚し,愛人阿佐子(桂木洋子)を家にひき入れる実業家東作(佐分利信).多忙で不在な夫への不満から,男関係の噂が絶えなく,離婚してからは,若い愛人と旅館を営む京子(轟夕起子).他の男の落し子ではないかと疑う父に反抗する息子の峰夫(三上真一郎).娘の沙夷子(牧紀子)は,こうした暗く冷たい背信の家庭で,人間の影を見詰めて成長する.沙夷子にも意中の人,遠緑にあたる康之(南原宏治)があるが,彼には病身の妻がある.沙夷子は妻のある男を恋した自分の姿を阿佐子に発見し,自の康之への愛情を断ち切ろうとする……という物語が,神戸港を見下す六甲山麓,神戸,大阪を背景に展開される.
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