随筆
志摩素通りの記
大島 正雄
1
1母性科学研究所
pp.40
発行日 1959年4月1日
Published Date 1959/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201665
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いつもは超満員の参宮快速列車も12月13日は季節外れか,客は極めてまばらである.応召時代暫く津にいた関係上,津迄は幾回となく往復しただけに,沿線風景はなつかしい.本居宣長の遺跡「鈴の屋」というより,和田金の牛肉で有名な松阪を過ぎる頃から,大根が目立つ.50米,時には100米にも及ぶ柵を作つて幾段にも大根を並べて乾しているのは,伊勢沢庵の原料だけに壮観である.宇治山田,鳥羽の風景,いずれも人影は少ない.
鳥羽駅から電車で南下する.急行とのことで車体はモダンだが,単線のためか,スピードはどうも急行とは云い難い.併し一点の曇りのない快晴のため冬を忘れさせる.午後1時鵜方着,西岡品子先生と保健所の方が車で迎えに来て戴いた.
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