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研究と報告
隠居のむら(三重県志摩郡国府)の精神医学的調査
Psychiatric Research for the Retired Folk-custom in Ko Mie-Ken
東村 輝彦
1
,
平本 喜六
2
Teruhiko Higashimura
1
,
Kiroku Hiramoto
2
1京都第一赤十字病院精神科
2三重県立志摩病院精神科
1Dept. of Neuropsychiatry, Kyoto First Japanese Red Cross Hospital
2Dept. of Neuropsychiatry, Shima Hospital
pp.493-497
発行日 1977年5月15日
Published Date 1977/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202615
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I.はじめに
核家族化が進む現代の家族状況のなかで,"老人と嫁の天国"といわれている三重県志摩郡国府の部落では,400年以上も続いている隠居制度が今も厳然と守られている。このような隠居制度は,自ずと家族内の人間関係にさまざまな影響を及ぼしているものと思われる。姫岡らは,社会学的立場から次のような点をその影響としてあげている。すなわち,嫁姑の間が他人行儀ではあるが対立・摩擦が少ない,離婚が少ない,親夫婦,継嗣夫婦のいずれも夫婦の結びつきが緊密である,長兄と弟妹,祖父母と孫の関係が疎遠なことなどである。また,この隠居制度は,深刻化する老人問題を考えるうえで,貴重な示唆を与える―子や孫が,両親や祖父母と"スープのさめない距離"に住む―制度として最近各方面から注目されている。
われわれは精神医学的立場から隠居制度と精神衛生,隠居制度のなかでの精神障害者の生き方などを知るために,まず,国府地区の精神障害者の実態を調べることを試みた。
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