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研究と報告
うつ病の比較文化精神医学的研究—京都・宇治ならびに伊勢・志摩の調査から
Transcultural Psychiatric Study of Depressive State
東村 輝彦
1,3
,
波多野 和夫
1,4
,
柴原 堯
1
,
玉置 美智子
2
,
服部 尚史
2
Teruhiko Higashimura
1,3
,
Kazuo Hatano
1,4
,
Yutaka Shibahara
1
,
Michiko Tamaki
2
,
Hisashi Hattori
2
1京都第一赤十字病院精神科
2山田赤十字病院神経科
3現在,藍野病院精神神経科
4現在,大阪赤十字病院精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Kyoto First Japanese Red Cross Hospital
2Dept. of Neuropsychiatry, Yamada First Japanese Red Cross Hospital
pp.1105-1112
発行日 1978年10月15日
Published Date 1978/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202835
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I.はじめに
ここ数年うつ病患者の増加とその病像の変化が注目されるようになり時代精神との関係や社会的背景などが数多く論じられている。そのなかで大原1)は,うつ病の病像が地域によって異なることを指摘しているが,わが国においては,比較文化精神医学的立場に立つうつ病の研究はほとんどみられず,わずかに日本人とドイツ人のうつ病像の差を検討した上田2),木村3)らの報告や症状の変遷をtransculturalな視点から論じた近藤4)の報告があるにすぎない。
われわれは,今回うつ病の比較文化精神医学的な研究を試みたのでその結果を報告する。われわれが本研究を試みるに至った契機は,共同研究者の一人東村が三重県から京都に転任してきた時の印象として同じうつ病の患者でも京都の患者には治療に手間取ったり,円滑な治療関係を作りにくい患者が少なからずみられたことによる。もしその印象のようにうつ病患者の病像や治療状況などが地域によって異なるとするならば,どのような相違があるのか,そしてそのような相違をもたらすものはなんであるかを検討してみようというのがわれわれの研究の目的である。以上のような目的からわれわれは,京都・宇治ならびに伊勢・志摩のうつ病患者について,発病状況,病像の治療への反応という点などに留意しながら症例の分析に重点をおいて比較文化精神医学的調査研究を試みた。
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