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女はおだてておかなければ損をする
pp.40
発行日 1958年11月1日
Published Date 1958/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201574
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話は多少さかのぼるけれど,この春の新聞の社会面トツプに「大企業なみの出版界」というような見出しで,出版屋がエラク儲けたという記事がのつていた.週間雑誌,綜合婦人雑誌,小説本などを出版している本屋10社ちかくが億単位の所得をあげたというのだ.創業いらい今日までに,億の金をかせいだというのではなくて,昭和32年度1年のあいだにこれだけ儲けたというのだから,なるほど大企業なみの出版界である.その記事はさらに,ボーナス60割とか80割とかを社員に支給するという,まことにウラヤマしいニユースにかざられていた.それにしても,なぜ,こんなに儲けたのだろう.
他人のフトコロをせんさくしたところで仕方ないとして,こうしたことから連想させられるひとフシがあるのである.出版界の相言葉——それも,最近,殊に尊重されている合言葉に,本を沢山売ろうとしたら,女,子供を相手にしろ.という言葉のあつたのが思い出されるのだ.女,子供という言い方は,いかにも相手をバカにしたような言葉づかいだが,いいかえれば,婦人および20代前後の青少年層を対象にしろということで,逆に,これらの人たちに歓迎されないような出版物では,とうてい儲からないというのである.学術専門書のたぐいはとにかくとして,一般教養書,娯楽書,小説本など,最大の需要者は彼らなのである.
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