講座
胎児とホルモン
小国 親久
1
1北海道大学
pp.45-49
発行日 1958年7月1日
Published Date 1958/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201509
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1.まえがき
胎児は胎盤を介して豊かな栄養物質の供給を受け,これを合理的に処理し,生命を保つばかりでなく,きわめて旺盛な成長発育を行うことは勿論だが,胎児の成長発育に伴う特異な生活現象や物質代謝の運営には,色々な生機物質とか種々な因子の関与ということが必要である.そして,胎児の生活にはホルモン活動の演ずる役割もまた軽視する訳に行かないが,母体・胎盤・胎児という一連の有機体の中で,どのように内分泌機構が形づくられ,母体と胎児間のホルモン関係とか,特に胎児自体の内分泌腺がどのようになつており,母体内で内分泌機能を既に行つているかなどの重要なことがらは未だはつきりしない点がかなり多いといえる.
何故,不明の点が多いかといえば,胎児をめぐるホルモンの秘密を明らかとするためには系統的な実験的研究が必要であるし,動物実験の成績をそのまま人胎児に当嵌めるということも無理を生ずる外,実験上にも色々多くの難かしい条件が附随して来るからである.
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