母性保健特集講座 妊娠
胎児の生理
小国 親久
1
1北海道大学産婦人科
pp.15-19
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202586
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1.はじめに
胎児とは,ヒトの発育の一過程に属するわけですが,その時代つまり胎生期の胎児の成長発育過程は,ヒトが現在のヒトに分化し進化してきた階程を,わたくしたちの眼前に再現していると思われるのであります.また,単に胎生期と呼ばれている同じ子宮腔内生活の時期において,幾たびか移り変わりがあり胎児は生活する場の移り変わりにたいして,器質的にまた機能的に協調したり適応したりしながら生育し,次の発育段階へ進んで行くということを繰り返しながら,徐々に母体外生活へ移行しヒトとしての生活を始められるように準備を整えているといえましょう.
これは,胎児が生まれる過程でも同じであり生まれてからしばらくの間も,胎生期の生活では生理的であったが母体外に排出されてしまうと非生理的となるいろいろな生活現象を,母体外で生活するヒトにふさわしいものに切りかえるべく,変わった生活現象がみられることとなります.
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