講座
出血についての新しい考え方
梶原 和人
1
1東大医学部
pp.54-59
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201325
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はしがき
ひどい出血が生命にかかわることは,何も私達の産科領域に限つたことではなく,すべての医学の領域に関係することはいうまでもありません.しかし特に妊娠,分娩と出血とは密接な関係にあり,少くとも不自然な出血や,異常な大出血は,その妊娠あるいは分娩がただごとではないことを警告していると申しても良い位であります.そして大出血の結果,母親は勿論,子供までも死亡するという取りかえしのつかぬ悲しい事態を引き起します.この様に出血は,妊娠分娩の異常を判定する上に必要であるばかりでなく,その予後を決定することにもなり,注意深く観察して診断に役立てると共に,適当な処置を速かに行つて母児の生命を守らなければなりません.最近問題になつているシヨツクも,大出血によつて起る場合が最も多く決して油断はできません.
出血がどういう時期に起れば,どういう病気を考えるべきで,それに対する処置はどうすればよいかということは,今更申し上げるまでもなく十分御承知のことでありましようし,また本題の趣旨からもそれますので,触れないことにします.ここでは最近注目されるようになつた新しい形の出血の原因と,それを起し易い病気について述べるのが目的であります.
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