講座
女性の心理的発達
加藤 正明
1
1東京医科大学神経科
pp.32-36
発行日 1957年6月1日
Published Date 1957/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201280
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まえがき
「人は女に生れない.女になるのだ」とは,フランスの実存主義文学者シモーヌ・ド・ボーヴオワール女史の有名な言葉です.つまり,女性が女性になるためには,幼時からすでに女として育てられていくことによつて,女性になつていくという環境条件が重要だといつているのです.実際,女性が女性としての生理学的特性をはつきりさせてくる思春期以前から女の子と男の子とは区別して扱われてきます.生れてすぐ着せられる産着でさえ,男女の差があるではありませんか.もうすこし大きくなると,女の子だから甘やかされたり,逆にお行儀がわるいといわれたりすることになります.
このように,生れるとすぐ両親も周囲のものも,女の子は女の子らしく扱い,育てていくわけです.こういう性別のしつけとして,例えば松村氏は幼稚園児童についてしらべ,言薬づかい,行動態度に関する差別や,持物・本玩具についての差別を挙げています.そのうち,女らしい言葉づかいと動作,理性にかちすぎぬこと,わがままでないこと,競争心がつよくないことなどが挙げられています.ことに,かさ,くつ,カバンのような人目につきやすいものが,男女の区別をつける割合の多いことなど,興味のある結果を示しています.
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