講座
女性の心理的発達(2)
加藤 正明
1
1東京医大神経科
pp.42-47
発行日 1957年7月1日
Published Date 1957/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201302
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3.母性行動について
成人期に達した女性にとつて,二つの大きな環境条件があります.その一つは職場ないし学校であり,他は家庭でありましよう.この二つの問題は,現代女性の心理を規定する大きな課題であるといわざるを得ません.この社会的条件と並んで,恋愛,結婚,妊娠,出産,育児という女性本来の問題があります.これらの問題は,社会的,身体的な問題を含んでいると考えられます.つまりここでも成人期の女性心理を考えるさい,社会的要素と身体的要素の両面を考える必要があるのです.
そこでまず,女性の身体的要素について考えてみましよう.まえに述べたように,女性が女性らしい性徴を示してくるのは,根元的には性ホルモンのエストロジエンが増加することによるのですが,第2次性徴といわれる種々の身体的変化にしても外界の刺激とはなはだ密接な関係があります.例えば月経周期などが,外部条件によつて変ることは誰も知つていることですが,極端なばあいは,戦時中の抑留婦人や,刑務所の女囚の無月経なども報告されています.ことに第3次性徴といわれる一般的な女らしさなどが,生理的条件だけでなく,外部の条件によつて左右されることは,社会階層や民族による差などでも示される通りです.
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