社会の動向
毛沢東演説の意味するもの
長谷川 泉
pp.38-40
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201318
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6月18日に発表された毛沢東中共主席の演説は,ハンガリー事件以来混迷をつづけている共産主義理論に一つの方向を与えるものとして注目された.いち早く「朝日新聞」は,そのほとんど全文を掲げた.日本の新聞において,毛沢東の演説が,このように大きく扱われたことはいまだかつて無かつたといえる.
このことは,上述の意味を大きく含んでいることがあずかつて大きいのであるが,そのほかにも無視できない理由があろう.いまや中国の国際的な位置が昔日の比でなく認められ出していることは否定し得ないであろう.スターリン批判以来,ソヴエトの支配体制が共産圏諸国に対して弱体化した折から,相対的に中国の位置が高まつたことはいえる.これは,いつわれない現実の姿である.6億の人口を擁し,広大なマーケツトを持つ中国の位置は,経済的に見ても世界の動向のなかの空白地帯ではあり得ない.日中貿易も,新なる観点から再検討されつつある.中国が,国際的にそのあるべき姿に於て,外交舞台にのし上つてくるのは,結局は時間の問題に過ぎないと思われる.
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