講座
新生児黄疸について
宮川 統
1
1東大産婦人科学教室
pp.32-36
発行日 1955年7月1日
Published Date 1955/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200882
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はしがき
新生児黄疸についてお話する前に黄疸とは如何にして起り,どんなものであるかについて簡単に述べますと,要するに血液中にビリルビンという黄色の色素が増加する為に起るのであります.此のビリルビンとは赤血球が破壊され,其の産物が肝臓共他の場所で変化されて出来た終末産物であり,通常は胆汁に混つて肝臓から胆道,胆嚢等を通つて十二指腸へ排出される運命となります.
(若しも何か異常があつて胆汁が腸管へ出ないと大便は白色となり,私達が通常見る黄色のものとは全く異つた状態となり,胆石症,胆管癌等の人に屡々見られる症状となります)次に此のビリルビンが血液中で増加するのはどんな場合かと云いますと,(1)赤血球が多量に破壊されてビリルビンの材料が豊富になる場合であります.此れは多くの場合溶血(例えば血液を蒸溜水に入れると赤血球の細胞膜が破壊されて中の血色素が外に溶け出してブドウ酒の様に透明な赤色を呈する事等を云う)という現象に由来します.又(2)其他として赤血球の破壊される程度が正常でも(赤血球の寿命は100日位と云われています)肝臓の機能が悪かつたり,又は胆道が何かの原因で狭くなつたり,閉塞されたりして胆汁が排出出来なくなつたりする時には血中にビリルビンが停滞する事になり黄疸が発来します.
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