特集 新生児の救急対策
新生児黄疸
白川 光一
1
Koichi Shirakawa
1
1香椎病院産婦人科
pp.523-531
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204624
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はじめに
新生児重症黄疸が医学的にのみならず社会的にも重大な関心を惹くに至つた原因は,一にその合併症たる核黄疸(以下KI (=kernicterus)と略記する)の発生による,児を死に至らしめたり,幸いに生存してもKIの後遺症たる脳性麻痺の遺残によつてきわめて悲惨な状態を招来することにある。したがつて新生児重症黄疸の対策といえばKl発生防止策に尽きるといつても過言ではない。
このような新生児重症黄疸重視の傾向にかんがみ近年種々の治療法が考案,提唱されつつあるとはいえ,フェノバルビタール,ACTH,グルタチン等々の薬物療法や光線療法はまずすべて予防的,姑息的あるいは補助的療法の域を脱しえないものであり,かつ一般的に有効なものほど副作用に対する検討の余地が多く残されているようである。したがつて"救急対策"の名称に値するものといえばやはり機械的にかなり一挙に蓄積ビリルビン(以下ビと略記する)を除去することができる方法として従来から定評のある交換輸血(以下ET (=exchange transfusion)と略記する)に待たざるをえない現状である。よつて本稿ではおもにETを中心に述べることとする。
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