講座
児頭と骨盤の適合について—主としてX線による検査法
林 基之
1
1東大産科婦人科
pp.49-55
発行日 1955年3月1日
Published Date 1955/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200813
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兒頭と骨盤との適合性を正確に知る方法が発見せられたならば,難産の大部分は解消する筈であるが,現在の所理想的な方法がなく,從つて産婦人科專門医は帝切にすべきか,自然産道から娩出せしむべきかについて苦心を拂つて居る.骨盤は骨と靱帶とにより固定されて居る爲成人にあつては妊娠時にも分娩時にも大した変化を来すものではなく,從つて一度この構造を正確に検索して置けば,分娩時に起り得る異常にも対処できるが,兒頭は妊娠月数に応じて変化し,又分娩時にも応形機能があつて相当の変化を蒙る爲,その形状と大さとの如何に依り産道に対して適合性があるか否かと云う問題を提供するわけである.
骨盤は後方は大きい仙骨と尾骨,側方は坐骨,恥骨の1部と腸骨,前方は恥骨と坐骨とより成つて居り,之等の骨は固い靱帶で接着し,妊娠時にはある種のホルモンにより靱帶は稍緩むが,骨質には変化が起らない爲,臨床的には骨産道は固定したものと考えてよい.孰れにしても骨盤は骨に依て囲まれた中室の円筒で其の高さに依り,形状,広さを異にする平面の集りと考えてよい.從つて兒頭との相互関係上,嚴格に云えば孰れの面でも問題になり得るわけであるが,便宜上,入口部,濶部,峽部,出口部の4平面が考えられて居る.他方見頭は尖つた,いびつなラグビー球のようなもので形状,大さも種々であるが,それ等を示す基準として前後径,大横径,小横径,大斜径,小斜径等が考えられて居る.
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