講座
飮む避妊藥
湯浅 秀
1
1国立公衆衛生院衛生人口学部
pp.33-35
発行日 1954年12月1日
Published Date 1954/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200750
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1.まえがき
家族計画運動の生みの親として有名な米国のサンガー夫人(Mrs.Magaret Sanger)が昭和28年4月に我国に来朝して,東京の中央区公会堂で講演された時に「米国では口から飮んで避妊をする薬が研究されている」と発表した.その席にいた人の大部分は薬を口から飮んで避妊を行うなぞ夢にも考えた事のない人であつたので大変驚いた樣子であつた.ちようど私の席の近所に有名な某産婦人科教授が坐つていたので意見を尋ねたら「そんな事は夢だ,不可能だ」と答え全く無関心の樣子であつた.ところが,今年4月に来日された折にも日本家族計画連盟創立記念大会の席上「口から飲む避妊薬が実用の可能性がある」と発表して一層注目されるようになつた.
此の樣な方法は従来我国で指導されている避妊方法のどれよりも簡単に使えるであろうと推察され我国では次第に多くの人達が関心を持ち始め,新聞,雑誌にも書き立てられるようになつた.然し歐米では既に数年前から此樣な研究が行われており一般大衆にも既に非常な関心が持たれているものである.飮む避妊薬とは従来から局所に使用されているゼリー,錠剤等とは異り口から内服して避妊の目的を達するもので専門家には「経口避妊薬」と呼ばれているものである.
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