講座
妊婦の外陰瘙痒症
水野 重光
1
1順天堂大学
pp.10-13
発行日 1954年8月1日
Published Date 1954/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200660
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まえがき
外陰瘙痒症という病名を局所変化を全く欠き瘙痒を主訴とする場合にだけ狹義に解釈している人もあるが,一般には婦人外陰の瘙痒を主症状とする疾患をすべてこれに含ませている.この樣な広義の外陰瘙痒症は日常かなり多く遭遇するもので,吾々のところで最近調べたところによると,1,785名の産婦人科外来患者中172名,即ち9.6%が外陰の瘙痒感を訴えの一つとしているのを知つた.勿論これらの婦人全部が激烈な瘙痒感を訴えているわけではなく,軽く時々感じる程度のものも含まれているが,外陰瘙痒感は疼痛,出血,帶下等と共に産婦人科における不快な症状の1つとなつている.しばしば発作性に起り,甚しい場合は仕事の遂行を妨げたり睡眠を障害したりすることが多く,更に進めば精神興奮状態に陥るものさえある.
本症の原因と考えられる病変は甚だ多く,その原因を局所に証明し得る場合(外因)と全身病性に発生する場合(内因)とがあり.また瘙痒だけを唯一の症状としていて原因の全く不明な眞性(或いは特発性)瘙痒症とよばれるものもある.痒みの発生の生理的機序に関してはいろいろ研究されているが今日尚未解決の点が尠くない.
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