補習講座 正常妊娠7
妊娠時における母體の変化
水野 重光
1
1順天堂医大
pp.21-25
発行日 1954年1月1日
Published Date 1954/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200520
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B消化器の變化
消化器の障碍は妊娠の比較的早期に現われるので,月経の閉止と共に妊婦自身が妊娠らしいと気づく最初の徴候である.食慾不振・惡心・嘔吐・飮食物に対する嗜好の変化特に酸味の嗜好(時に異喰症といつて平素食べない生米・壁土・木炭・白墨等を好んで食べることがある)・唾液分泌過多・胸やけ等が起り.これをつわりと呼んでいる.妊婦の約半数以上に見られ,経産婦より初産婦に来ることが多い.つわりは2カ月の始めから中頃に起りはじめ,3〜4カ月の終りに自然に軽快消失することが多く,妊娠後半期まで持続するものは稀である.
惡心・嘔吐等はしばしば早期空腹時に起り,僅かに混濁した粘液を吐出するだけで栄養障碍を伴わないのが特長である.つわりの症状が増惡し,そのため栄養を害し一般状態が障碍きれるようになれば,それは既に病的の妊娠惡阻という状態に移行したものであるが,生理的と病的との境界は明瞭ではない.
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