今月の言葉
信念は数字から生れる
S
pp.5-6
発行日 1953年12月1日
Published Date 1953/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200493
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岡山医科大学産婦人科教授の八木日出雄先生が,最近の「産婦人科の世界」誌に書いておられる「学術論文が隨筆か」という隨筆(?)は,医師の人ばかりでなく,助産婦の人々にとつても,一読に値するものであると思う.この文章の要点としては,「数学的の基礎を以て論を立てよ」ということであり,ひいては,「数学的に物事を観察する習慣をつけること」の大切なことを述べていられる.
昔から,日本人は「数字的に物をみるという観念」がうすい.八木先生はドイツの子供の例を引用しておられるが,私も又,チヨコレートの菓子煙草をしやぶる10才か12才位の子供から,日本で一番高い山の高さ,日本の人口,日本の面積をたずねられて閉口した事がある.日本の人口ぐらいは誰でもわかつているにせよ,日本の面積を37万平方キロ(今の日本の面積)と即座に答え得られる人,富士山の高さをメートルでこれこれと答えられる人が何人あるでしよう.道を歩いていても,路上に遊ぶドイツの子供から,"何時だ"?"という質問を受ける人が多い.何時になつたら家へ帰つてくるのだよと母親にいわれているのである。昔何とかいう有名な大將軍人が,文部大臣になつて四国のある学校にいつて講演をしたとき,"自分は数字の話を聞くと頭が痛くなる"といつたところ,ある学生が立つて,"そんなら文部大臣をやめてしまえ"といつたとか.政治をする人がこんな調子では心細い.
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