お産の俗信
妊婦の食禁
日野 寿一
1
1東大
pp.44-46
発行日 1953年4月1日
Published Date 1953/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200327
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
妊婦が柿をたべると胎兒が腐る
柿の渋は防腐作用がある。この場合は熟柿のことで,腐つたように見えることからの連想で,こんなことが言われるのであろう。しかし熟柿は自家酵素の作用で過熟し,渋が甘味質に変化したのであつて,腐敗したのではない。過熟するのは柿ばかりではない。酉瓜やメロンのたなおちも過熟であるが,西瓜やメロンは昔の支那になかつたので,迷信の材料になる光栄を有しない。妊婦が熟柿をたべると,妊娠が11ヵ月も12ヵ月もに延びて胎児が過熟すると言うのなら,多少筋道が通らぬでもない。
実際に於て,腐つた児が生れるのは先天性梅毒である。それが重い時は2〜3月で流産する。早期流産が2〜3回も続くと,母親の血液検査をする必要がある。5〜8月では胎児が腐つて出る。梅毒菌の作用で身体が破壊されるのだからこの場合は腐つた児と言える。これは梅毒歯のせいであつて,梅や柿を食つたためではない。柿の花はよく落ちるものである。梅毒では鼻骨の梅毒性骨膜炎で鼻がよく落ちる。ハナがよく落ちる点が似ている,では頓智教室の「類似点を述べよ」の答にしかならない。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.