巻頭随想
成長してゆく若い助産婦たち
小櫃 美智子
1
1東大附属助産婦学校
pp.9
発行日 1962年8月1日
Published Date 1962/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202379
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戦後の助産婦業務ほど,社会状勢の動きに支配されたものはないでしよう.その意味で助産婦学校の担当者にとつてもまた苦難な時代であつたと思います.社会の要求する助産婦とは……,将来助産婦は何をなすべきか……,そのためにはどのようなカリキュラムが必要か……,卒業後の身分保障はどうあるべきか……など,学校関係者の最大な関心事であり,また研究課題でもあり,当事者によつて常に検討が加えられていたことであります.学生達もまた同じ苦難を背負わなければなりませんでした.社会から多くの要求を受けながら,いろいろな制約によつて思うようにならない助産婦業務の厚い壁を前にして,将来の助産婦が進むべき方向を見出そうとして,学生なりの懸命な努力を続けております.そういつた学生達の悲壮な姿に接して,私は,深い敬虔の念を抱くことがしばしばございました.
しかし現実には,教育程度の向上にともなわない助産婦の処遇問題,従つて助産婦学校への応募者数の減少,それにともなう病産院助産婦の不足,そこから発生する助産婦の過労等々悪循環の連続であり,それらの悪循環を阻止しようと,学校関係者は懸命の努力を払つてみました.が,これらの矛盾は容易に解決されないまま,その他の医療全般の矛盾とともに,医療制度,教育制度につながる問題として,最近国家的な検討が加えられることになつてきたようであります.
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