講座
妊娠初期の諸檢査
古澤 嘉夫
1
1都立墨田病院産婦人科
pp.23-27
発行日 1952年7月1日
Published Date 1952/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200139
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1)妊娠かどうかをきめる諸檢査
妊娠の診断ということはいちばんむつかしいことです。産婦人科の外来の診断の中でも誤診の率からいうと妊娠の診断がいちばん多いのであつて,妊娠を妊娠でないとしたり,妊娠でないものを妊娠と考えたりする間違はすくないものではありません。妊娠8週までで内診の所見だけをもとにして診断することは決して容易なことではありませんから,そのために確実に妊娠を決定するためのいろいろな診断法が行われているのです。検査による妊娠診断は,ふつう内診所見によつて確定しにくいときに行うわけですから確実な適中率の高いものでなければ役にたちません。妊婦の尿を用いる生物学的の妊娠診断法はこの目的にかなうもので,いろいろな病気の診断につかう検査法の中でもこれほど高い適中率を示す方法はほかに比肩するものがありません。最初この方法を発見したツオンデツク,アツシユハイムの原法はすでに歴史的のものになつて臨床ではもう使われなくなつたので,皆さんもご覽になつたことがないかも知れません。幼若な雌ハツカネズミを5匹も用意しなければならないし,注射を6回もするという不便がありますし,95時間目に結果を見るのでは時間もかかりすぎますから,臨床的の価値がすくなくなつたのは当然です。しかしこの妊婦の尿にあらわれてくる絨毛膜の産物がケツシ類動物(ネズミ,ウサギ等)の卵巣に及ぼす変化は今日のホルモンの進歩に新しい時期を開いたのです。
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