私の經驗
初保護の思い出
若林 雪枝
pp.48-49
発行日 1952年4月1日
Published Date 1952/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200088
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實際の業務から離れております私が,時々思い出す分娩に關することのうち,いつも頭に浮ぶことは,最初に取り扱つた分娩介助の状況であります。
分娩介助を云い渡された當日の朝の私は,丁度「立つたり坐つたり」の言葉の樣に,全く落着きを失つてすつかり馴じんでいる筈の分娩室をさえ始めての場所の樣に不安で一杯でした。分娩室の指導係であるAさんから「經産婦ですから早目に外陰部消毒が出來る樣に準備しておきなさい」と云われて,ますます胸の鼓動が激しくなり,顔をしかめて陣痛發作を怺えておられる産婦さんに慰めの言葉も出ない位でした。「さあ手を洗いはじめなさい」「ハイ」と返事して手指の消毒にかゝつたのですが,その前に行つた手消の消毒の練習の時と異り,思う樣に手が動かない。一緒に手を洗つているAさんが,「さあブラッシを横に指先を」「縦に手の甲を」「さあ5分」と云う樣に順序と時間をリズムに乗せた號令の樣におつしやつて下すつたので,つられる樣に時間までに洗い終ることが出來た。
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