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はじめに
James Parkinsonは1817年に「An essay on shaking palsy」において“Walking becomes a task which cannot be performed without considerable attention.”と記載しており,歩行動作の自動性が損なわれていることを示している1).パーキンソン病における自動性の低下には線条体後方(被殻)の活動減少が関連しているが,病初期には線条体前方(尾状核)は比較的保たれており,患者は自動性の低下を代償するために注意機能を使用して動作をコントロールしている2).これは残存している注意機能に負荷がかかっている状態であり,複合的な状況など注意機能による高い処理能力が求められる状況に直面したときには「注意機能による代償」が破綻し歩行障害が顕在化する.
レボドパ開始から数年後には,薬効の持続時間が短縮しオフの時間帯のすくみ足が出現する.進行に伴いレボドパに反応しないすくみ足が出現してくる.一方でレボドパによって誘発されるすくみ足もある.レボドパの効き始めや効き終わりでのすくみ足が顕著になることもある3).このように進行期のすくみ足の病態は複雑であり,日内変動への対応が必要である.
オンの時間帯のすくみ足が出現すると,転倒リスクの増加とともに心理面では不安,抑うつ,無力感,自己効力感の低下などが生じる.また公共ですくみ足が生じることによる困惑や外出時の転倒恐怖から,社会的な活動を回避する傾向になり患者の生活の質(quality of life:QOL)は著しく低下する.転倒の恐怖による外出機会の減少は運動量の減少から二次的な筋力低下を生じさせ,悪循環に陥る.
したがって,オンの時間帯のすくみ足は患者にとって最も困難な問題であることが多く,代償的な動作方法の指導や環境調整が重要になるが,その対応には苦慮することも少なくない.本稿では,自験例のデータを交えてすくみ足の障害像の捉え方と理学療法の臨床実践について考えてみたい.
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