Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)において,理学療法士を含めたリハビリテーションスタッフを配置している施設は増加傾向にある(表1)1-4).また,米国小児科学会の「周産期ケアガイドライン第8版」では,NICUで新生児の専門知識,摂食嚥下障害の評価と管理に熟練した新生児療法士(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士)を少なくとも1名は配置することが推奨5)されている.しかし,専従理学療法士配置によってどのような効果が期待されるかについては客観的根拠が示されていない.また,NICUにおける介入時期や介入量・期間,介入内容,さらにフォローアップ体制などはいまだ確立されたものはなく,施設ごとの独自の経験則によることが多い.さらに,早産児・低出生体重児への発達支援の介入効果に関する報告も少なく,十分なエビデンスがないのが現状である.
埼玉医科大学総合医療センター(以下,当院)は総合周産期母子医療センター,高度救命救急センター,小児救命救急センターを有する3次救急病院であり,総ベッド数は1,000床を越える.また,NICUベッド数は51床,新生児回復室(growing care unit:GCU)は30床と日本有数の規模を誇る.NICUのリハビリテーションは小児専属チーム(理学療法士5名で構成される)により提供されており,2021年のNICUの総入院数654例のうちリハビリテーション処方件数実績は131件,うち1,000g未満の児は25例であった.当院は2017年から経口哺乳の早期獲得,早期からの発達支援を目的に専従理学療法士の配置やNICUと小児科を兼任する理学療法士1名を増員したことに加え,当院独自にクリティカルパス6)を作成(表2),導入した.
近年,ICUや一般病棟などへの専従理学療法士配置の効果として,処方患者数の増加,入院からリハビリテーション開始までの日数の短縮,理学療法時間の増加による日常生活動作(activities of daily living:ADL)拡大と入院期間の短縮などが報告7-11)されているが,NICUにおいての報告はない.一方,NICUにおける介入についての研究では,哺乳支援の早期介入により哺乳自律獲得早期化と入院期間短縮が報告されている12).また,異常な吸啜パターンは長期的な運動・認知・言語の発達遅滞を予見することも示唆されている.Wolthuis-Stigterら13)の報告では,42〜50週postmenstrual age(PMA)における児の吸啜パターン異常から,生後5年時の運動スキル,知能,言語能力の遅延を予見できる可能性を示した.さらに,Medoff-Cooperら14)は,40週PMAでの異常吸啜パターンは生後1年の時点での神経発達の予後決定因子であると報告した.これらの報告は,吸啜行動の正常化が長期的神経予後に影響を与える可能性を示唆している.
本稿では,早期介入の必要性や当院における専従理学療法士配置の効果,クリティカルパスをもとにした介入の実際(医療安全や感染対策の取り組みも含む),現状と課題,今後の展望について述べる.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.