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基本法の成立から拠点施設の相談窓口設置まで
2004年新春のNHKテレビ討論番組に多くのがん経験者が集まり,「いったいがんの相談は,どこにどうすればよいのか? 治療はどれが正しいのか? 行くところ行くところで説明が異なり,どうしてよいかわからない.国は何をしているのか」などと多くの参加者がいわゆる「がん難民」の窮状を切実に訴えていたのを筆者は鮮明に覚えている.その後,がん対策基本法が2006年に成立し,国立がんセンターを主体としてがん登録事業が始まり,全国約450か所にがん診療連携拠点病院が設置され,がん相談窓口の開設が義務化された.治療法もガイドラインで標準化・均てん化され,さまざまな医療制度が整備され,同時に薬物療法,手術方法に革新的な進歩があり,がんの診療は臓器や領域を超えてめざましい勢いで発展し続けている.今やがんの教育は患者のみならず中学校教育にも組み込まれ,がん患者の治療と仕事の両立支援も積極的に行われている.
一方,脳卒中も死亡率こそかつての第1位から第4位となり,経年的に減少しているが,毎年30万人近くが発症し,長期リハビリテーション,機能障害に伴う生活の質の著しい低下,復職不能・解雇,家族介護負担,膨大な医療介護費,重度の要介護疾患の第1位など,がんに勝るとも劣らない国民的重大疾病である.脳卒中対策では2008年に法制化をめざす議員連盟が結成され,2014年に「脳卒中対策基本法」を提出したが国会解散で廃案となり,その後,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(以下,「脳卒中・循環器病対策基本法」)」の設立をめざして日本脳卒中協会,日本脳卒中学会および日本循環器学会が協力して活動を展開し,2018年12月,実に運動開始から10年の年月を経て「脳卒中・循環器病対策基本法」が公布されたのである.2019年に法律が施行され,2020年10月に国の基本政策がまとまり,政府の循環器病対策推進基本計画の概要が示された.
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