Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
柳田国男の『日本の伝説』―隻眼の英雄
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.594
発行日 2004年6月10日
Published Date 2004/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100603
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『日本の伝説』(新潮文庫)は,柳田国男が昭和4年に『日本神話伝説集』として発表した作品を後に改題したものであるが,その中の「片目の魚」という章には,わが国の歴史における隻眼の人物に対する畏怖にも似た感情が記されている.
この章で柳田は,全国には至る所に片目の魚が住むと言われる池があるとして,上高井戸の医王寺や上州曽木の例などを挙げる.そして柳田は,これだけ各地に片目の魚の言い伝えがある理由として,「最初から目の二つある者よりも,片方しかないものをおそろしく,また大切に思うわけがあったので,それで伝説の片目の魚,片目の蛇のいい伝えが始まり,それにいろいろの昔話が,後から来てくっついたものではないか」と推測するのである.
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