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はじめに
Society 5.01)は,「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会(Society)」とされる.共有が不十分だった知識や情報を,人工知能(artificial intelligence:AI)により,必要な情報が人類の必要な時に誰にでも提供され,ロボットなどの技術で,年齢や障害などによる制限や課題を克服していく社会をめざす.
少し前までは,SF映画の中だけで実現していたテクノロジーを活用した未来が,すぐそこまで来ている.われわれ訪問リハビリテーションの身近なところでは「科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence:LIFE)」によるビッグデータから,より効率的な医療や介護を提供することをめざす取り組みが進められている.さらに,より臨床に近い例を想像してみる.
「もし,車椅子が空を飛んだら重度な障害者も,もっと気軽に旅行に行けるのに」と想像してみる.すでにドローンで飛ばすことは可能なようだ.
「もし,個々の障害特性に合わせた福祉用具が自由自在に作れたら……と想像してみる.3Dプリンターでできてしまう.しかも数時間で.
「出かけないで,誰とでも顔を見て話ができたら……」.この数年で日常的にオンラインでの会議,研修が行われ,ビデオ通話はごく当たり前になった.
このようなドラえもんが四次元ポケットから道具を出して問題を解決してくれるように,道具やテクノロジーで障害による課題を解決できるような世の中が迫っている.あえて,迫っているという表現をしたのは,われわれセラピストはこのテクノロジーで障害による課題が解決される世界にある種の恐れを感じているように思うからだ.
われわれの専門的な知識や技術が必要のない世界が来てしまうのではないか? AIに仕事を奪われてしまうのではないかという恐れである.
本特集で筆者の担当するのは「在宅言語聴覚士(以下,ST)の実際と今後の展開について」だが,この「恐れ」の中身について考えていきたいと思う.なぜなら,それがわれわれSTの実際と専門性を考えることであり,これからの在宅でのSTによるリハビリテーションの展開について考えることにつながると思うからである.
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