Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「さかなのこ」—さかなクン的人物に宿る光と影を描く
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.687
発行日 2023年6月10日
Published Date 2023/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202862
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「さかなのこ」(監督/沖田修一)は,「男か女かはどっちでもいい」という縦書き肉筆テロップから始まる.本作パンフレットでは,「これは,さかなクンの映画であって,さかなクンの映画ではありません」との監督の言葉を引いている.すなわち,テレビで人気を博しているさかなクンの現在に至るまでの道程を,女優・のん演じる「ミー坊」として,虚実織り交ぜて振り返ったものだ.先掲したテロップは,ジェンダーや事の真実性に縛られるのではなく,自由な表現にふれてほしいという,楽しみ方のガイダンスとしての意味をもつ.
本作は,さかなクンの人生がそうであったように,ミー坊の成功譚だが,そこをひとまず捨象して,あえて細部に目を向けるなら,厳しい現実を見て取ることができる.
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