インターホン
日々のかかわりから—彼女の場合
横尾 京子
1
1淀川キリスト教病院
pp.522-523
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205258
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ふと,"どうして子供を産むのだろうか"と分娩場面に慣れてしまった私に思わせてしまうことがある。この思いに多くの褥婦は了解の応答でもあるかのように,"なぜって……"と微笑みかえしてくれる。そして,"でも,もういらないわ。2人で十分だわ"とか,"あと1人は欲しいわ"と続ける。3人目を希望する人には滅多におめにかかれない。2人の健康な子供がいれば,まず一安心という気持ちは十分理解できることであり,それが今のところ当然のこととして受止められている。しかし,2人の健康児を授かることは簡単なようでやはり難しい。異常経過をたどった者にとって,次の子供が健康であるか否かという確率は,男の子か女の子かと期待する50%の確率とは同一視できない重みがあり,彼らにとって,異常が極度であればある程,健康児を出産することの意味は大きく深い。
ある日の詰所は,彼女の妊娠に少々困惑気味だった。
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