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栄養状態が良好だと健康長寿!
今日,高齢者の低栄養は,公衆衛生上の重要な健康課題であると認識されている.しかし,かつてはそうではなかった.栄養指導においても,高齢期は中年期の延長と考えられ,メタボリックシンドロームや肥満が念頭に置かれていた.実は,高齢期は肥満ではなくむしろ「やせ」が,また,過栄養ではなくむしろ「栄養不足」が,健康上のリスクとなる.わが国でこのことを最初に指摘したのは,東京都老人総合研究所「中年からの老化予防総合的長期追跡研究」1991〜2001(Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology- Longitudinal Interdisciplinary Study on Aging:TMIG-LISA)による栄養疫学研究である.ここから得られたデータを,当時筆者が専門委員として参加していた「健康日本21(第二次)策定委員会」に提出した結果,低栄養が高齢者の健康課題の1つに取り上げられたという経緯がある.
TMIG-LISAでは,東京都小金井市と秋田県南外村に在住する地域代表性のある高齢者集団(小金井市は1/10無作為抽出標本,南外村は65歳以上の全員)を対象とし,初回調査(小金井市1991年,南外村1992年)および追跡調査(2001年まで)が実施された.この初回調査で得られた身長と体重からbody mass index(BMI)を算出するとともに,血液測定で得られた血清アルブミン,総コレステロールおよび血中ヘモグロビンの値から,それぞれの四分位を求め,それに基づいて対象者を4群に分けて,以後追跡6年間の死亡リスクを比較した1).その結果,BMI,アルブミンおよび総コレステロールでは,いずれも第1四分位群(最も低い群,対象者の25%が該当)の死亡リスクが最も高く,他の3群との間に有意差があった.また,ヘモグロビンにおいては,第4四分位群に比べると第3四分位群から第1四分位群へと,その数値が低くなるほど死亡リスクが増大した.
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