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低栄養とは何か
低栄養(undernutrition/malnutrition)は「栄養摂取不足や取り込みの障害によって生じ,体組成変化(除脂肪体重と体細胞量の減少)をもたらし,心身機能や疾患の予後不良につながる状態」と定義されている1).低栄養は小児から高齢者まであらゆる年齢層に生じるが,リハビリテーションの主な対象者である高齢者では特に低栄養が生じやすい.低栄養の有病割合は環境によって異なり,地域在住高齢者では〜4.2%,入院高齢者では5〜14%,施設入所高齢者では1.5〜8.2%,高齢者リハビリテーション入所者では13%である2,3).さらに本邦回復期リハビリテーション病棟においては29%が低栄養であるとの報告もある4).
低栄養に陥ると感染性合併症や褥瘡の増加,入院期間の延長,死亡率の増加,医療コストの増加,生活の質の低下などさまざまな悪影響が生じる5).加えて,リハビリテーション対象者においては身体機能や日常生活動作(activities of daily living:ADL)の改善を阻害することが報告されている.筆者ら6)の調査では回復期リハビリテーション病棟入院患者の43.5%にGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)により判断した中等度以上の栄養障害(GNRI<92)を認めた.さらに脳卒中患者に限定すると中等度栄養障害は退院時Functional Independence Measure(FIM)および自宅復帰の独立した危険因子であった.一方,入院時に低栄養を呈した回復期脳卒中患者において,退院時にかけて栄養状態がより改善した群ほどFIM効率,FIM利得が高いことが示されている(図1)7).さらに体重増加〔body mass index(BMI)≥0.7kg/m2〕の達成は,退院時運動FIMスコアに対する独立した正の説明変数である8).しかし,全国調査では回復期リハビリテーション病棟のるい痩(BMI<18.5kg/m2)患者割合は入院時よりも退院時のほうが大きい(22.3% vs. 24.1%).このことは回復期リハビリテーション病棟入院中に栄養状態が悪化する例が少なからず存在すること,栄養管理が不十分であることを示唆するものと考えられる.
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