増大特集 加齢とリハビリテーション
企画にあたって
「総合リハビリテーション」編集委員会
pp.553
発行日 2022年6月10日
Published Date 2022/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202517
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「正月(門松)は冥途の旅の一里塚,めでたくもありめでたくもなし」は,一休宗純禅師が正月に骸骨の付いた杖を突きながら詠んだといわれる狂歌です.数え年で歳を数えた当時,正月には共に一つ歳をとることから家族や友人とお祝をしましたが,一方で歳をとることは死に近づくことを意味します.加齢の二面性を捉えた,言い得て妙な狂歌です.医学的には「加齢」とは生まれてから死ぬまでの時間経過,「老化(老い)」とは加齢に伴う生体機能の低下として両者を区別していますが,社会一般にはこの狂歌のように,加齢を老化とほぼ同義で捉えています.
わが国は高齢人口が増加する一方,若年人口の減少から,世界に類のない超高齢社会に突入しています.このような超高齢社会の到来の中で,従来の医療・介護・福祉の社会制度では対応しきれない問題が生じています.加齢に伴い身体および精神機能の低下は個人差もあるものの確実に出現し,その程度によっては家庭生活や社会生活に支障を来します.例えば,人口比率の変化に伴い疾病構造が変化し要介護者数が急増しています.家族構成についても核家族化が進み,単独世帯,夫婦のみの世帯,夫婦ともに65歳以上の世帯などが増加しており,介護できる者がいない,あるいは老いた者が老いた者の介護をする「老々介護」の世帯が多くなり,結果的に,在宅で介護をすることが難しくなっています.また,障害者も加齢により自身の健康障害や二次障害を合併する一方,家族や支援者の高齢化への対応も新たな課題となっています.
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