Japanese
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増大特集 加齢とリハビリテーション
第1部 社会の変化と制度改革
1.超高齢社会の到来と社会保障制度改革—医療制度改革を中心に
The arrival of a super-aging society and reform of the social security system: Focusing on the reform of the medical system
松田 晋哉
1
Shinya Matsuda
1
1産業医科大学医学部公衆衛生学
1Department of Preventive Medicine and Community Health, School of Medicine, University of Occupational and Environmental Health
キーワード:
高齢社会
,
社会保障制度改革
,
医療制度改革
,
医療費適正化計画
Keyword:
高齢社会
,
社会保障制度改革
,
医療制度改革
,
医療費適正化計画
pp.557-565
発行日 2022年6月10日
Published Date 2022/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202518
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社会保障財政の現状
日本は今急速な少子高齢化の過程にある.2020年に1億2千万人いた人口が今後急速に減少し,2050年には1億人を切るレベルになると予想されている.2010年秋に「The Economist」の記事で取り上げられた「The Japan syndrome」の内容は衝撃的であった.この記事で,日本は「戦争や飢饉,災害以外で人口減少が起こる最初の先進国」であり,今後,「労働力人口の減少→経済の低迷→貧困層の増大→さらなる少子化→労働力人口の減少→経済の低迷」という悪循環に陥ると記述された1).
わが国の社会保険制度は社会保険料と税金をもとに運用されている.換言すれば国民の所得の一部を保険料や税金という形で集め,それで制度を支えている.しかしながら,もうすでに20年以上国民所得の伸びを超える上昇率で社会保障費の伸びが続いている.図1は2021年度の一般会計歳出と歳入の構成を示したものである2).歳入をみるとその40%が公債で35%は赤字国債となっている.他方,支出を見ると22%が国債の返還,34%が社会保障費となっている.社会保険については特別会計で別途保険料がプールされているので,ここに示されているのは公費で負担する部分となる.部分的に公費が入るとしても,わが国と同様の社会保険制度に基づいて医療を行っているフランスやドイツでは,医療保険の原資は被保険者と雇用主が支払う保険料である.そのためわが国に比較すると保険料率は高いものとなっている.税金に基づく社会保障制度を採用しているイギリスや北欧諸国の場合は,収めなければならない税金が高く設定されていることはよく知られている事実である.
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