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はじめに
2019年国民生活基礎調査の概況1)から,わが国の介護が必要になった理由をみてみると,骨折・転倒が4位(12.5%),関節疾患が5位(10.8%)となり,骨と関節という運動器の疾患が合わせて全体の約1/4を占め,1位の認知症(17.6%),2位の脳卒中(16.1%)をはるかに凌駕している1).これからみても運動器の疾患が要介護の主な原因となって,高齢者の生活の質(quality of life:QOL)を著しく障害しているのは明らかであり,超高齢社会に突入したわが国においては,高齢者のQOLの維持・向上や健康寿命の延伸,医療費の低減のためには,運動器疾患の予防対策は喫緊の課題である.
運動器疾患の代表的な疾患には,骨粗鬆症(osteoporosis:OP)と変形性関節症(osteoarthritis:OA)がある.これらの疾患の一次予防のためには,まずどのくらいの対象者がいるのか(有病率)を明らかにする必要がある.さらに追跡調査が可能となれば,どのくらいの患者が発生するのか(発生率)を明らかにすることができる.これら疫学指標(有病率,発生率)を推定することは,疾病予防の第一歩である.さらに複数の疾患を目的疾患とする場合は,同じ集団でそれらがどのように関連しているのかをみることができる.しかしながら,運動器疾患には,慢性に進行し,経過が長く,症状がほとんどないという特徴をもつものが多く,医療機関を受診しないことが多いため,これらの疾患の予防に必要な疫学指標を推定するためには一般住民の集団を設定して,集団全体について検診を行う必要がある.このような事情のために,患者数がきわめて多いと考えられるにもかかわらず,OPやOAを目的疾患とした疫学研究の報告はまだ十分とはいえない.
筆者ら2,3)は,本邦の運動器障害とそれによる運動障害,要介護予防のために,OPおよびOAを含む運動器疾患の基本的疫学指標を明らかにし,その危険因子を同定することを主たる目的として,2005年より大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability(ROAD)スタディを開始し,ベースライン調査および3年後の追跡調査のデータ解析結果を用いてOPおよびOAの有病率,発生率を推定し,これらの相互関係について報告してきた.本稿ではこれらの報告について紹介し,OPとOAの関係を明らかにする.
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