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はじめに
変形性関節症(osteoarthrisis:OA)は,膝関節・股関節・肘関節・肩関節・腰椎などに疼痛・腫脹をはじめとした症状がみられ,さまざまな原因により関節の変形を来す疾患の総称である.高齢者に多くみられ,年齢が高くなるにつれて有病率が上昇する.特に膝OAは高齢女性に多く,本邦では60歳台の女性で約半数,80歳以上で8割以上が罹患し,患者数は2500万人以上と推定される.また,腰椎OAは高齢の男性に多くみられ,3700万人と推定されている.股関節OAは欧米と比較して有病率が低く,男性では0〜2%,女性では2〜7.5%程度であるといわれている.これらの数値はX線所見上の有病率であるため,症状があるOAは膝・腰椎ともにその1/3程度であると考えられている.
OAの発症因子として関節の脆弱性を高めるものには,全身性因子と局所性因子がある.
・全身性因子:加齢,遺伝,構造的異常,筋肉低下,栄養不足など
・局所性因子:関節の構造的異常〔寛骨臼形成不全,大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI),外傷による関節損傷の既往など〕,関節支持筋の筋力低下,アライメント不良,関節の感覚障害など
また,関節への直接的な負荷因子としては肥満,関節外傷,過度な関節の反復使用によって発症に至る.
好発部位としては荷重関節である下肢の関節や頸椎,腰椎などに発症し,下肢では変形性膝関節症が多い.変形性股関節症の頻度は欧米に比べ低いが,歩行障害など症状が重篤であるため,受診例が多いと考えられる.主な症状は慢性的な疼痛となり可動域制限がかかり,進行すると神経症状を引き起こすこともある.疼痛を自覚しても受診せずに放置するケースも多く,その間に病気が進行し,さらにいったん変形した関節は不可逆的であるため,早めに医療機関を受診し,適切な治療を開始することが重要である.
変形性脊椎症は椎間板の変性を中心とした脊椎の退行性変化をさし,頸椎・腰椎に好発する.主に変形性頸椎症,変形性腰椎症があり,症状は慢性疼痛や可動域制限が起こり,進行すると神経症状を引き起こすこともある.加齢により生じることが多く軽症のものはX線像で変性が認められても無症状であり,病的といえないこともある.椎間板と後方の左右一対の椎間関節により脊柱の動きが可能だが,これらが退行変性した状態といえる.椎間板が変性するとその異常な動きを止めるように骨棘が形成される.疼痛などの症状が出現して初めて変形性脊椎症と診断されることが多い.
以上のことから加齢は発症に最も影響を与える危険因子で,軟骨の退行性変化をはじめとする関節保護組織の機能低下がOA罹患の危険性を高める.これは不可避の因子であるため,次なる因子である肥満を改善することにより発症率および罹患率の削減につなげることができると考える1).
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