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はじめに
運動器の1つである骨格筋は,加齢に伴い低下する.この加齢性の筋肉減弱症(以下,サルコペニア)は,日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)が低下する1つの原因と考えられる.ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)は,「骨・筋肉・関節などの運動器の障害のために移動機能の低下を来した状態」と定義され1),サルコペニアはロコモの中で運動器障害の中の1つと位置付けられる.身体的,精神的,社会的に脆弱な状態を示すフレイルも含め,これらの3者は強く連関する.サルコペニアやロコモが進行すると,運動器の疾患や機能低下が原因となって歩行機能やバランス機能などが低下する.また,屋内外の移動やトイレ,入浴,着替えなどの日常生活において介助が必要となる.さらに,身体を思うように動かせないことで外出するのが億劫になり,家に閉じこもりがちになることや「長時間の座位行動(座り過ぎ)」が増大することが懸念される.
新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症であるCOVID-19は世界中で猛威を振るい,2021年8月現在でも深刻な状況が続いている.こうした「コロナ禍」と称される厳しい社会情勢のなかで,それまでは当たり前のように実施できていた活動が制限されることも増えてきた.さまざまな活動自粛が呼び掛けられたことで,人々の身体活動時間の減少や,座位行動時間の増加が報告されている2,3).こうした状況下で高齢者の方々の健康を守り,介護予防を推進するためには,感染症対策を適切に講じながら,日常生活活動が制限されることで生じ得る健康二次被害を防いでいくことが肝要である.具体的には,ロコモ,サルコペニア,フレイルの予防・改善にも目を向けることが重要であり,コロナ禍が長期化してしまうことを見越し,新しい生活様式の中でも実行可能な対策を社会に広めていくことが必要である.
そこで本稿では,われわれが開発を進めてきた「ロコモ予防運動プログラム」について解説し,高齢者に対する介護予防の取り組みとして,ロコモ,サルコペニアの予防・改善に向けた運動の重要性について論じる.また,われわれがコロナ禍において実施してきた社会実装の取り組みについて,事例を紹介する.
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