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はじめに
がんや脳卒中などの疾病のために就労の継続が困難となり,あるいは困難になると本人が考えて,退職してしまった患者を経験することがある.労働者が憂いなく治療を受け,職業生活との両立ができるように支援することは,医療機関の重要な役割の1つと考える.
全国の労災病院では,2014年から治療と就労の両立支援に関する取り組みが進められている.厚生労働省は2016年2月に「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」1)を作成し,その後にガイドラインの参考資料として,がん,脳卒中,肝炎,難病の事例編を含む「企業・医療機関連携マニュアル」2)を公表した.労働者健康安全機構は,がんや脳卒中などの「治療と就労の両立支援マニュアル」3)を2017年2月に作成し,両立支援コーディネーターの養成研修を行い,2020年には「治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル」4)を作成,公表している.2018年度の診療報酬改定では,「療養・就労両立支援指導料」が創設され,2020年度には対象となる疾患,対象となる企業側の連携先,主治医と事業者の連携のあり方が見直され,新たに相談支援加算が新設された.
このように「働き方改革実行計画」の重要課題の1つである「治療と仕事の両立」については,より充実させる取り組みが関係各機関で進められている.しかしながら,すべての医療機関において実効性のある両立支援が行われてはいないという現状がある.
本稿では,労災疾病臨床研究事業「医療機関における両立支援の取り組みに関する研究」において実施した調査結果,ならびにその結果を踏まえて作成した「医療機関における治療と仕事の両立支援導入ガイド」の概要を提示し,両立支援制度における医療機関の役割について解説する.
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