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はじめに
発達性協調運動障害(developmental coordination disorder;DCD)は1987年に精神疾患の診断・統計マニュアル〔Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-Ⅲ-R〕で取り上げられ,運動能力障害として示された.当時は注意欠如・多動症(attention deficit/hyperactivity disorder;ADHD)や自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)との重複診断が認められずDCDの診断に結び付きにくかったが,協調運動の困難を呈する子供を「不器用な子(clumsy children)」や「発達性失行(developmental dyspraxia)」と総称し,アセスメントや支援方法の検討が進められてきた1).2014年にDSM-5の中で,ASDやADHDとの重複診断が認められ,広くDCDの名が知られるようになってきた.
DCDに対して適切な支援を行うための法整備も進められ,発達障害者支援法施行令(2005年)の発達障害の定義に「協調運動の障害」と明記されている.協調運動の困難を呈する子供に対し,心理機能の適正な発達と円滑な社会生活の促進のために,できるだけ早期から切れ目ない支援を行うことが求められている2).
2017年には第1回日本DCD学会学術集会が開催され,アセスメント・ツールの標準化,支援の必要性に関するエビデンス確立のための研究基盤も整いつつある3).DCD学会を中心に国際的に用いられているDCD Questionnaire(DCDQ),Movement Assessment Battery for Children Ⅱ(MABC-2)といったアセスメント・ツールの日本語版の開発と標準化が進められているが4-6),臨床では使用できない状況にある(2020年3月時点).協調運動の困難さを呈する子供の理解が進み,支援を求める声も大きくなってきたことから,新たに日本の文化に適合したアセスメント・ツールを開発する動きも出てきた7,8).
そこで本稿では,DCDの定義や近年開発が進められている日本独自のアセスメント方法を紹介し,乳幼児期から青年期にかけてのDCDへの支援の視点,最近の研究のトピックスを取り上げる.
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