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はじめに
脳卒中による運動麻痺は,下肢に比べ上肢に優位に障害を残すことが多い.上肢麻痺が完全に回復するのは5〜20%とされ1),多くの片麻痺患者に上肢麻痺が残存する.
片麻痺患者の上肢においては発症後1か月間で最も麻痺の回復が認められ,その後は麻痺の重症度によって回復の経過が異なるが,中程度の上肢麻痺では発症後3か月まで,重度の上肢麻痺では発症後6か月まで麻痺の回復が認められるといわれている2).
しかしながら,現状の医療体制のなかでは在院日数の短縮や日常生活動作(activities of daily living;ADL)改善度に焦点が当てられ,急性期では軽度の麻痺があってもADLが自立していればそのまま自宅退院になるケースがある.また回復期においてもADLの自立度が重視され,上肢機能訓練よりもADL,手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living;IADL)の獲得に比重が置かれることも少なくない.このような場合,非麻痺手でADLの遂行を補うことが学習され,麻痺手がADL参加に至らないケースも多くみられる.さらに生活期(慢性期)においては,獲得された上肢機能が麻痺手を使用する効率の悪さなどから,使用頻度が減り,学習性不使用に至ることで上肢機能の低下を来すこともよくみられる.特に麻痺が重度の場合は,非麻痺手による代償がより強化され,さらには麻痺手の管理不足から廃用手や関節拘縮を生じさせることは少なくない.
二次的障害や学習性不使用に陥らないためには,患者自身が麻痺側上肢に対する自己管理を獲得できることが重要と考える.そのためには入院時から自主トレーニングとして取り入れ,段階的に反復練習をさせて定着させることが必要である.また退院時には在宅での自主トレーニングを継続するための,ホームプログラムの指導を行うことも重要となる.
今回,東京慈恵会医科大学附属第三病院(以下,当院)で実施しているNovEl Intervention Using Repetitive TMS and Intensive One to one training(NEURO®)における自主トレーニングおよびホームプログラムの指導について主に紹介する.
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