巻頭言
座敷牢調査から100年に思う
藤井 克徳
1
1NPO法人日本障害者協議会
pp.1131
発行日 2018年12月10日
Published Date 2018/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201493
- 有料閲覧
- 文献概要
「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ,此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ.」,これは呉秀三(くれ しゅうぞう1865〜1932)らによって刊行された『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』の中の一文である.リハビリテーション関係者にあっては,どこかで触れたことがあろう.今年は,この「座敷牢調査」の報告書の刊行から100周年にあたる.文語体でやや馴染みにくいが,そこに書き込まれている「病気の不幸に加えて,日本に生まれた不幸」とする二重の不幸論は決して古くささを覚えない.むしろ斬新ささえ感じる.
広島藩医の父呉黄石と母せきの三男として生まれた秀三は,後に東京帝国大学教授や東京府立松沢病院(現在の都立松沢病院)の初代院長を歴任するなど,日本の精神医学の祖として数々の足あとを残している.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.