巻頭言
30年たってみて
田代 桂一
1
1山鹿温泉リハビリテーション病院
pp.597
発行日 2018年7月10日
Published Date 2018/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201353
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1988年,未だになぜかわからないが,何をする診療科かもよくわからずに,東海大学医学部リハビリテーション学教室の門をたたいた.当時,医局では,同僚や先輩と「リハビリテーション科医のアイデンティティとは」という議論がよく聞かれた.リハビリテーション医学を追求し,「リハビリテーションは後療法ではない」「あらゆる傷病にリハビリテーションは必要です」と他科へアピールするのも,仕事の1つであった.
この30年間で,リハビリテーションという言葉の認知度は格段に高まった.医療のみならず,介護,福祉にまでリハビリテーションが溢れているような状態だ.制度的には,2000年の回復期リハビリテーション病棟の設置は,大きな転換点の1つであったと思う.保険制度において,精神科を除き,診療科の名前のついた病棟はなく,やっとリハビリテーション医療が日の目をみたような感じでうれしかった,「リハビリテーション科医のアイデンティティの確立」に一歩前進したような感じであった.ただ,急性期,回復期(亜急性期),維持期と病期別に機能分類し,入院期間を短縮し医療費削減を図るという大きな流れの中での制度設計であり,急性期から生活期まで,小児から高齢者まで,ライフスタイルのすべてにかかわる医療を行うリハビリテーション科にとって,いくつかの問題を含んだ制度であった.リハビリテーション医療の大半は,置き去りになった.いつの日か,回復期リハビリテーション病棟から,回復期が消えてリハビリテーション病棟へというのは幻想のようである.それどころか,現状をみると,リハビリテーションが消えて,回復期病棟へと変貌を遂げようとしているとしか,筆者には思えない.
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