教養講座 詩の話・7
作詩にあたつて
山田 岩三郎
pp.73-75
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911120
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明治から大正にわたつてのある時期には,詩は作られるものではなくて,おのずと湧きあがるように生れ出ずるをよしとした。霊感(インスピレーシヨン)のようなものの衝動や,感興の高まりによつて生まれてくるものが,きわめて自然に即し,純真・素朴,つまり純粋なのだとされた,作るという作意の加わることは,不自然の所業であつて,不純に近いとする考え方である。
ここでは,題材となるものは自己中心の感情の起伏が主になる。よろこびや悲しみ,いとしさやにくしみ,悩みや苦しみ,といつた感情の表現がもつとも主要な詩材なのであつた。
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