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はじめに
蝸牛における音波情報変換の機構に関して,Davisが可変抵抗マイクロホン説9)を提唱してからすでに20数年が経過した。その間,多くの受容器モデルが考案されてきたが,Davisの説を根底からくつがえすような新しい知見や理論の確立はほとんどなかった。最近,毛細胞内電位を同定することが可能となり,受容のメカニズムを細胞内はもちろんのこと,分子のレベルで考えることのできるような資料が得られつつある。したがってここではDavis説の詳しい解説の繰り返しはできるだけ避けて,次のような数項目のトピックスを中心として考察を行いたいと思う。そしてこの記述が本特集の趣旨にいくらかでも添うものとなるならば幸いである。それらは,毛細胞受容器膜の高濃度K+微量Ca2+イオン環境,毛細胞内電位の同定と細胞外記録との対応,受容器膜の整流化作用とCa2+感受性,受容過程における第2フィルターの存在,周波数検知器としての感覚毛と毛細胞などである。各項目において,下等動物の側線器や蝸牛管の毛細胞からの研究成果を紹介しつつ哺乳類蝸牛毛細胞の受容機構について論及する。なお,毛細胞下端における求心性シナプス,遠心性抑制,化学伝達物質,中央階正電位の成因,血管条細胞の電位,蝸牛機能の好気性代謝依存性などは解明されるべき重要な課題であるけれども,ここではすべてを網羅することができず割愛させていただくことをはじめにお断りしておく。
Abstract
Since Davis proposed the "variable resistance microphone theory" on the transducer mechanism of the cochlea, about a quarter of a century has elapsed and there has been no fundamental ob-jection to the theory until the present. The mechanism, however, has been understood in more detail from the experimental evidences collected in recent years. For these few years the intracellular potentials of hair cells in guinea pig's cochleae were identified by means of a marking technique and the membrane properties of receptor cells became to be explored in a molecular level.
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