Japanese
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特集 重度障害児者の生活の現状と課題
重度脳外傷者への生活支援
Life-Support for persons with severe traumatic brain injury
阿部 順子
1
Junko Abe
1
1岐阜医療科学大学
1Gifu University of Medical Science
キーワード:
在宅ケアニーズ
,
グループホーム
,
アウトリーチ支援
Keyword:
在宅ケアニーズ
,
グループホーム
,
アウトリーチ支援
pp.903-908
発行日 2017年9月10日
Published Date 2017/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201085
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はじめに
脳外傷者は意識障害が回復した後,まず身体障害が前景に現れ,身体機能回復のためのリハビリテーションを受ける場合が多い.しかし,若年層では身体機能の回復はめざましく,とりわけ社会生活に戻ってからは高次脳機能障害が問題として立ち現れてくる.
高次脳機能障害者と暮らす家族のストレスや介護負担が高いことを示す研究がいくつかある.白山1)は2009年に15か所の都道府県の支援コーディネーターに依頼し,高次脳機能障害180家族の介護負担に関する調査を行った.その結果,57.6%の家族にうつ傾向が認められ,介護負担感は在宅の要介護高齢者家族に比べて30〜60%ほど高いと述べている.さらに,うつ傾向や介護負担感は続き柄・介護期間・ソーシャルサポート・経済状況・家族会への加入の有無は関係なかったこと,社会的行動障害「あり」が介護負担感,うつ傾向の高さに影響していたことを明らかにした.
NPO大阪脳損傷者サポートセンターら2)は「若者と家族の会」の会員を対象に行った調査で,遷延性意識障害者家族41名と高次脳機能障害者家族92名の介護負担感を比較した.その結果,遷延性意識障害者家族は身体的負担68.3%,経済的負担43.9%,精神的負担26.8%であったが,高次脳機能障害者家族は身体的負担57.6%,経済的負担66.3%,精神的負担78%と,高次脳機能障害者家族の介護負担感が遷延性意識障害者家族より総じて高いこと,とりわけ,精神的負担が50ポイント以上も高いことを指摘している.
これらの調査は,身体障害よりも高次脳機能障害,とりわけ社会的行動障害が生活をするうえで大きな問題であることを示唆している.
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