- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
運動器疾患の治療においてリハビリテーションの役割が大きいことは言を俟たない.特に骨折治療においては,保存的治療,手術治療にかかわらず,適切な後療法が良好な機能回復につながるが,骨折の部位,骨折型,治療法,患者の年齢など多くの要素が骨癒合に関与するため,リハビリテーションの考え方をパターン化することはきわめて困難である.施設によっては大腿骨近位部骨折に対する標準的治療法などでクリニカルパスが作られているが,多くの骨折では個別に対応されているのが現状であろう.「個別に対応」するには,骨癒合のメカニズム,各種の保存的治療や手術治療の特徴を理解し,さらにX線をはじめとした画像検査の結果を正しく解釈できる必要がある.
本書は2000年にStanley Hoppenfeldらによる原著が発刊され,2002年に江藤文夫らの監訳により日本語版として発行された『骨折の治療とリハビリテーション(Treatment and Rehabilitation of Fractures)』の改訂版とも呼ぶべきものであり,産業医科大学整形外科とリハビリテーション科のスタッフを中心にまとめられた力作である.編集者が序文に書いているように,この十数年の間に骨折治療は大きく進歩し,特に大腿骨転子部骨折に対するショートフェモラルネイル,各種骨折に対するロッキングプレート,椎弓根スクリューを主体としたインストゥルメンテーションによる脊椎の強固な内固定,生体吸収性材料などが広く用いられるようになった.全体の構成,各セクションの項目立ては前書を踏襲しているが,記述の内容とX線を中心とした図はほぼ完全に改変されている.総論は骨折治癒とメカニズムから荷重の考え方までわかりやすく書かれており,整形外科医だけでなく運動器疾患にかかわるリハビリテーション医師や理学療法士,作業療法士にはぜひ通読していただきたい.各論は骨折ごとに「治療の指針」として受傷機序,分類,治療のゴール,治療法,合併症などがまとめられている.特に下肢の骨折では歩行の各相において骨折部にどのような力が加わるかが詳細に記載されている.続いて「治療の実践」として,受傷後の経過期間ごとに骨癒合の状況,整形外科およびリハビリテーション上の注意,治療法としてその骨折に特有な評価や指導のポイントがまとめられている.以上のような記述は他のテキストでみかけたことがなく,きわめてユニークでわかりやすい.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.