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はじめに
脊椎脊髄疾患はその多くが脊髄,馬尾,神経根に対する圧迫をもとに生じることは周知の事実である.その圧迫形態には静的圧迫と動的圧迫があり,どちらか単独で発症するというよりは,どちらもが存在して発症する場合が多い.われわれは過去に頸椎,胸椎,腰椎の各レベルにおいて脊髄造影検査後に前屈(屈曲),後屈(伸展)姿勢でmulti-detector CT撮影を行い,ほとんどの高位で後屈時に脊柱管前後径,硬膜管横断面積,脊髄横断面積が前屈時と比べて狭小化することを明らかにし報告してきた3,6,7).特に頸椎レベルにおけるこれらの結果は,後屈(伸展)時に上位椎の椎体後下縁と下位椎の椎弓上縁ならびに黄色靭帯によって硬膜管が挟まれ狭小化するという狭窄発症のメカニズムである「pincer mechanism」を支持するものであった.また,腰椎レベルにおいても腰部脊柱管狭窄症患者では,安静時には症状がないかもしくは軽微であり,歩行もしくは立位の持続により症状が発現もしくは増悪することをわれわれ脊椎外科医は日常診療で数多く経験してきた.ただし,われわれが診断に用いる画像評価は多くが静的圧迫を評価するものである.従来,動的な狭窄を評価するために実施されてきた脊髄造影検査(+CT)は造影剤使用の必要性と侵襲ならびに放射線被曝があること,そして時間も手間も要することから,多くの施設でルーチンの検査としては実施されなくなりつつある.そのため,まれではあるが静的圧迫はほとんどなく動的圧迫が主体の腰部脊柱管狭窄症患者が,MRI単独の検査では異常がないとして見逃されて治療・手術対象とならず,診断・治療が可能な施設を探し訪ねるようなことも経験してきた.上記のことを念頭に置いて「腰椎の中での脊髄,神経の立ち振る舞い」について,症例をもとに検討していきたい.
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